今の職場でコードを書いていてif
に対して原則else
を書かないという雰囲気があるのですが、個人的にはelse
を書きたいのでその話です。
世間的にelse
を書かないというコーディングルールは一定の支持があるようで、まぁ一種の宗教だとは思っていますが、個人的にはどうなんかなと思っています。まぁ割と最近の流行りな気もしていますが…。(昔はなかったと思う…というとアレですが)
目次
else
があってほしい理由
else if
やelse
ブロックがあると処理の関連性が見やすくなると考えています。
処理の関連性がわかりやすくなる
例えば以下のコードの場合、if
が連続しているよりelse
がある方が処理の関連性が明示的に見えると思います。else
で繋げないことは基本的に処理として関連性がないはずです。
// ifのみ
export const hoge = (mode: 1|2|3) => {
if (mode === 1) {
// なんかの処理
return 'hoge';
}
if (mode === 2) {
// なんかの処理
return 'piyo';
}
if (mode === 3) {
// なんかの処理
return 'fuga';
}
}
// elseあり
export const piyo = (mode: 1|2|3) => {
if (mode === 1) {
// なんかの処理
return 'hoge';
} else if (mode === 2) {
// なんかの処理
return 'piyo';
} else if (mode === 3) {
// なんかの処理
return 'fuga';
}
}
予期せぬ不具合が入り込みづらくなる
if
だけで構成されたコードでは以下のようにif
ブロックの外に処理を入れ込むことができますが、このときA1, B1, C1のif
の外にある処理は後続処理に影響します。しかしこの書き方だと処理の影響範囲が見積もりづらく、不必要なバグを生む元になるため、個人的には避けたいと考えています。(他の処理の作用に引っ張られているので、副作用のある実装ということになると思っています)
またA1, B1, C1の行数が伸びるとコードの見通しが悪くなり、if
同士の関係性が分かりづらくなります。
else
を使うとこういった副作用的な振る舞いをする実装が作りづらくなり、影響範囲もブロックインデントで分かれるので、そういった心配がなくなります。
// ifのみ
export const hoge = (mode: 1|2|3) => {
// なんかの処理 A1
if (mode === 1) {
// なんかの処理 A2
return 'hoge';
}
// なんかの処理 B1
if (mode === 2) {
// なんかの処理 B2
return 'piyo';
}
// なんかの処理 C1
if (mode === 3) {
// なんかの処理 C2
return 'fuga';
}
}
else
が必要なのに書き忘れることが減る
else
を書かないことに捕らわれていると以下のようなコードが生まれることがあります。
さてこのコードにおいて!validHoge(hoge) || !hasPiyo
のケースはどのように処理されるのでしょうか?答えは処理されませんが、もしこのコードに対してUnit testが実装されておらず、特段のドキュメントもなければ、それが正しいのかどうかをコードから読み取ることが出来ません。
const isValidUsername = (username: string, hasInputed: boolean) => {
if (validUsername(username) && hasInputed) {
return requestSearchUsername(username);
}
}
せめてこう書いてあれば判断も付くでしょう。
const isValidUsername = (username: string, hasInputed: boolean) => {
if (validUsername(username) && hasInputed) {
return requestSearchUsername(username);
} else {
// 何もしない
}
}
因みにこの処理はユーザー登録フォームでユーザー名の書式が正しければ既に存在するユーザー名かどうかをAPIに問い合わせ、既に存在すればエラーメッセージを、存在しなければtrue
を返すという内容ですが、そもそも書式が不正である場合は何もしないため、ユーザーはエラーであることを知ることが出来ません。
もしelse
ブロックを書いていれば考慮漏れに気づけた可能性もあったのではないかと思います。
else
を使うケースを考えなくて良くなる
ifに対して原則else
を書かないというルールがあってもelse
を書かないと成り立たないケースは存在します。そう言った場合に原則if
しか書いてはならないというルールがあるとelse
を書いてよいかどうか考える必要が出てきますが、元からelse
も書いて良いルールであればそこは考える必要がありません。個人的に判断の余地が生じるコーディングルールはチーム開発ではない方が良いと考えています。
またこのルールの結果、本来必要だったelse
を書かなかったことにより不具合が発生する可能性もあります。(実装者が軽率にelse
を使わなかったことによる判断ミス)
そもそも何故else
を書いてはならないのでしょうか?コードのネストが深くなるからでしょうか?少なくともelse if
相当のif
には、その作用はありません。あるとしたら純粋なelse
ブロックはインデントが減るでしょう。しかしこのインデントはあったほうが処理の関連性が掴みやすくなると思います。
else
のないif
は悪か?
ここまで散々else
を書くべきと言ってきましたが、ではelse
がないif
は悪かと言うと、そうは思いません。例えば、以下のような早期リターンと呼ばれる記法であればそれは良いと考えています。では何を早期リターンとするかですが、個人的には例外的に処理を継続しない場合を一つの基準にしています。私もここの感覚は上手く言語化できていないのですが、恐らく何もしないときだけelse
を書かないのは問題ないと考えています。
これは本質的ではない処理のせいで、いたずらにネストが増えるのを防ぐためです。関連性がある場合にelse
を使うのがコードのメリハリとして目視で読んだときの認知性の向上に繋がると考えています。
export const putLog = (message: string) => {
if (message === '') return;
console.log(message);
}
この点については個人的に共感できる意見があったので紹介させて頂きます。
記事中にある以下の部分、特殊ケースに対してガード節を使うというところで、例外ケースでのみ早期リターンをするという部分がありますが、やはりこれが一番無難だなと思いました。
条件記述の単純化 「ガード節による入れ子条件記述の置き換え」
特殊ケースに対してガード説を使う
ただ例外ケースとは何か?それは数値化でき、チーム開発で標準的に取り扱えるものなのか?と言われると、正直私もそこまでは言語化できていないので難しい部分ではあります。そもそも人間が書くコードが完全に均一になることはないと考えているので、そこまで強い思想を持って考えてはいないです。(もしChatGPTに書かせてもバラツキは出るでしょう)
私がこの記事で言いたいのは単にelse
を書いてもいいのではないかということと、その場合でも早期リターンは許容しても問題ないだろうというところなので、一旦早期リターンの基準についてはここでは考えないこととします。
そうなると結局else
なしでif
だけあればいいじゃないかという話に戻ってくるとは思うのですが、正直そこは常識で考えてほしいというところです。まぁ常識も人の数だけあるので難しいですし、そんな物があればこんな記事も生まれていないわけで、ソフトウェア開発は難しいですね。